インボイス制度(適格請求書等保存方式)では、一定の業種に限り、通常の適格請求書(6項目)より記載要件が簡略化された 適格簡易請求書(簡易インボイス) の交付が認められています。本記事では、国税庁の公開情報をもとに、対象業種の範囲と記載要件を整理します。

適格簡易請求書(簡易インボイス)とは

適格簡易請求書は、不特定かつ多数の者を相手に課税資産の譲渡等を行う一定の事業において、通常の適格請求書に代えて交付できる書類です。小売業のレシートや飲食店の領収書など、取引の相手方が特定しにくいケースに対応するために設けられた仕組みです。

交付できるのは、適格請求書発行事業者として登録された事業者のみです。未登録の免税事業者は適格簡易請求書を交付できません。

対象業種

消費税法および国税庁Q&Aによると、適格簡易請求書を交付できる事業は以下のとおりです。

法定の対象業種(6業種)

  1. 小売業
  2. 飲食店業
  3. 写真業
  4. 旅行業
  5. タクシー業
  6. 駐車場業(不特定かつ多数の者に対するものに限る)

「これらに準ずる事業」も対象

上記6業種に加え、「これらの事業に準ずる事業で不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業」も対象となります。国税庁Q&Aでは、以下の事業が具体例として挙げられています。

  • ホテル・旅館等の宿泊サービス
  • 航空サービス
  • レンタカー事業

「不特定かつ多数の者」の判断

国税庁Q&Aによると、取引の相手方の氏名等を確認する場合であっても、相手方を問わず広く一般を対象に資産の譲渡等を行う事業は「不特定かつ多数の者に対する事業」に該当します。個々の事業の性質により判断されるため、自社の事業が対象に該当するか迷う場合は、所轄の税務署等に確認することが考えられます。

記載要件(5項目)

通常の適格請求書が6項目の記載を必要とするのに対し、適格簡易請求書は以下の5項目です。

  1. 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
  2. 課税資産の譲渡等を行った年月日
  3. 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(軽減税率対象品目である場合はその旨)
  4. 課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額
  5. 税率ごとに区分した消費税額等 または 適用税率(いずれか一方の記載で足りる)

通常の適格請求書との記載要件の比較

記載事項適格請求書適格簡易請求書
発行事業者の氏名・名称・登録番号必須必須
取引年月日必須必須
取引内容(軽減税率の旨含む)必須必須
税率ごとの税抜価額または税込価額の合計必須必須
税率ごとの消費税額等必須消費税額等または適用税率のいずれか一方
適用税率必須上記いずれか一方
書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称必須不要

適格簡易請求書が通常の適格請求書と異なる点は主に2点です。

  • 交付を受ける事業者の氏名又は名称の記載が不要
  • 「税率ごとの消費税額等」と「適用税率」はいずれか一方の記載で足りる

これにより、不特定多数の顧客に対して発行するレシートや領収書でも、要件を満たすインボイスとして機能します。

端数処理のルール

適格簡易請求書における消費税額の端数処理ルールは、通常の適格請求書と同様です。「1枚の書類につき、税率ごとに1回」の端数処理が原則であり、商品明細ごとに端数処理を行って合計する方法は原則として認められません。

端数処理の方法(切上げ・切捨て・四捨五入)については、発行事業者が任意に選択できます。

注意点

  • 対象業種の「準ずる事業」の範囲は、個々の事業の性質に基づき判断されます。自社の事業が対象に該当するかどうか不明な場合は、所轄の税務署または税理士等の専門家に相談することを検討してください。
  • 適格簡易請求書を交付できるとしても、相手方から通常の適格請求書の交付を求められた場合の対応については、取引先と事前に確認しておくことが考えられます。
  • 記載要件を満たさない書類は、受領した取引先が仕入税額控除を受けられなくなるため、請求書発行ソフトのテンプレートが要件を満たしているかを事前に確認することが重要です。

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まとめ

適格簡易請求書は、小売業・飲食店業・タクシー業など不特定多数を相手とする6業種(およびこれらに準ずる事業)が交付できます。通常の適格請求書(6項目)と比べて、「交付を受ける事業者の氏名等が不要」「消費税額等と適用税率はいずれか一方で可」の2点が異なります。

自社の請求書やレシートが対象業種に当てはまるかを確認し、利用しているソフトウェアのテンプレートが5項目の要件を満たす形式になっているかを確認することが出発点となります。

なお、本記事は国税庁の公開情報をもとに整理したものですが、個別の税務判断・申告については必ず税理士等の有資格者にご相談ください