電子帳簿保存法(電帳法)には、「電子取引データ保存」「電子帳簿等保存」に加えて、紙で受け取った書類をスキャンして電子データとして保存する「スキャナ保存」 という制度があります。本記事では、国税庁の公開情報をもとに、スキャナ保存の対象書類と適用要件を整理します。

スキャナ保存とは

スキャナ保存とは、取引先から紙で受け取った契約書・領収書・請求書などの国税関係書類を、スキャナやスマートフォン等で読み取り、一定の要件を満たした状態で電磁的記録として保存することを認める制度です。

この制度を活用すると、紙原本をスキャン後に廃棄できる場合があるため、書類の保管スペースの削減や、ペーパーレス運用に向けた取り組みの一環として利用されています。

なお、スキャナ保存は 義務ではなく任意 です。要件を満たして活用すれば紙原本を処分できる場合がありますが、スキャナ保存を行わずに紙のまま保存することも引き続き認められます。

対象となる書類

スキャナ保存の対象は、取引先から受け取った(または交付した)紙の国税関係書類 です。国税庁は対象書類を「重要書類」と「一般書類」に分けています。

重要書類

資金や物の流れに直結・連動する書類です。

  • 契約書
  • 領収書
  • 請求書
  • 納品書(受領側)

重要書類には、後述の 帳簿との相互関連性確保 が求められます。

一般書類

資金や物の流れに直結・連動しない書類です。

  • 見積書
  • 注文書
  • 納品書の写し(交付側)

一般書類については、令和6年1月以降は帳簿との相互関連性確保が 不要 とされています(令和5年度税制改正)。

適用要件の全体像

スキャナ保存を行うには、国税関係書類の種類(重要書類・一般書類)にかかわらず、以下の要件を満たす必要があります。

1. 入力要件(入力期間)

書類を受け取った後、一定期間内にスキャニングを完了させる必要があります。

  • 受領後おおむね7営業日以内(通常の業務サイクルで迅速に処理する場合)
  • または、業務サイクル上の通常処理期間内(例:月次で処理するサイクルが社内にある場合)

入力期間内に単にスキャニング作業を終えるだけでなく、後述の真実性確保の措置(タイムスタンプの付与等)まで完了させることが求められます。

2. 解像度・階調の要件

スキャン時の画質に関する要件です。

  • 解像度:200dpi以上
  • 階調:赤・緑・青それぞれ256階調以上(カラー対応)

ただし、スキャニングに使用する機器・方法については問わないとされており、スキャナのほか、スマートフォンやデジタルカメラを使用することも認められています。

3. 真実性の確保(いずれか1つ)

スキャン後のデータが改ざんされていないことを担保するため、次のいずれかの措置を講じる必要があります。

  1. タイムスタンプの付与(入力期間内に付与)
  2. 訂正・削除の履歴が残るシステム、または訂正・削除ができないシステムの利用
  3. 正当な理由のない訂正・削除の防止に関する事務処理規程の整備と運用

コスト面から、個人事業主や小規模事業者では事務処理規程の整備が現実的な選択肢となる場合が多いとされています。国税庁の特設サイトでサンプル規程が公開されています。

4. 可視性の確保

保存したデータをいつでも確認できる状態にするための要件です。

  • ディスプレイやプリンターなど、見読可能な装置の備付け
  • 整然とした形式・明瞭な状態での出力が可能であること
  • 国税庁の求めに応じてダウンロードできること

5. 検索機能の確保

電子取引データの保存と同様に、以下の項目で検索できる状態が求められます。

  • 取引年月日
  • 取引金額
  • 取引先

また、日付・金額の範囲指定や複数項目の組合せ検索ができることも必要です。ただし、基準期間(前々年)の課税売上高が1,000万円以下の事業者については、税務職員のダウンロード要求に応じることを条件に検索要件が不要になる場合があります(国税庁の規定に基づく)。

重要書類のみに課される追加要件

帳簿との相互関連性の確保

重要書類(契約書・領収書・請求書等)をスキャナ保存する場合、関連する帳簿の記録事項との間で相互に関連性を確認できるようにしておくことが求められます。

具体的には、請求書番号や伝票番号等を帳簿と書類の双方に記録しておくことで、対応関係が追えるようにすることが求められます。

なお、一般書類(見積書・注文書等)については、令和5年度税制改正によりこの要件が適用されなくなっています。

令和5年度改正によって廃止された要件

スキャナ保存の利用促進を図るため、令和5年度税制改正(令和6年1月1日以後適用)では以下の要件が廃止されました。

  • 入力者等に関する情報の確認要件(スキャンした担当者の情報記録が不要に)
  • 解像度・階調・大きさに関する情報の保存要件(スキャン時のメタ情報の保存が不要に)
  • 一般書類の帳簿との相互関連性要件(一般書類のみ廃止)

また、以前は税務署長への事前承認が必要でしたが、令和4年1月以降は事前承認不要で任意のタイミングで開始できます。

注意点

  • スキャン後に紙原本を廃棄できるかどうかは、各書類に適用される法令(商法、民法等)の保存義務規定による制約も受ける場合があります。スキャナ保存の要件を満たしても、別の法令上の要請から原本保管が必要になる場合があるため、各書類の性質に応じて判断することが必要です。
  • 税務調査時には保存データを提示できる状態であることが前提です。
  • スキャナ保存の詳細な要件は改正により変更される場合があります。最新の国税庁公開情報を確認してください。

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まとめ

スキャナ保存は、紙で受け取った書類を電子データとして保管することを認める制度です。対象書類は重要書類と一般書類に分けられ、それぞれ適用要件が異なります。主な要件は「入力期間内の入力」「解像度・階調の確保」「真実性の確保(タイムスタンプ等)」「可視性の確保」「検索機能の確保」で、重要書類には加えて帳簿との相互関連性確保が求められます。令和5年度改正でいくつかの要件が緩和されました。

なお、本記事は国税庁の公開情報をもとに整理したものです。スキャナ保存の実際の運用方法や書類ごとの保存義務については、税理士等の専門家にご確認ください。