インボイス制度(適格請求書等保存方式)の導入を契機に、日本でも**電子インボイス(デジタルインボイス)**の普及が進んでいます。単に PDF をメールで送るだけでなく、売手のシステムから買手のシステムへ請求データを直接連携できる仕組みとして、国際標準規格の Peppol(ペポル) が活用されています。

本記事では、デジタル庁および国税庁の公開情報をもとに、Peppol・デジタルインボイスの基本的な仕組みと日本での位置づけを整理します。

デジタルインボイスとは

デジタル庁の定義によると、デジタルインボイスとは「請求情報を、売り手のシステムから買い手のシステムへ、人を介することなく直接データ連携し、自動処理される仕組み」です。

PDFをメール添付で送るやり取りは電子化ではありますが、受領側でデータを手入力して会計システムへ取り込む必要があります。デジタルインボイスでは、このデータ入力作業を省略し、受領した請求データをシステムが自動的に処理できます。

Peppol(ペポル)とは

Peppol(Pan-European Public Procurement On-Line) は、電子文書を標準化した形式でネットワーク経由に交換するための国際標準規格です。もともとは欧州の公共調達向けに開発されましたが、その後民間取引にも広く普及し、現在は多数の国・地域で採用されています。

Peppol は次の 3 つの要素から構成されます。

要素内容
文書仕様請求書等の電子文書のデータ形式・項目定義
運用ルールネットワーク参加者の認定・管理のルール
ネットワーク規格参加者間でデータを安全に送受信するための通信仕様

日本の Peppol(JP PINT)

デジタル庁が日本の Peppol Authority

デジタル庁は日本の Peppol Authority(管理機関) として、日本の電子インボイス標準仕様である JP PINT(Japan Peppol Invoice) を策定・管理しています。JP PINT は日本のインボイス制度(適格請求書等保存方式)の要件に対応した仕様です。

JP PINT とインボイス制度の関係

JP PINT 標準に基づくデジタルインボイスは、インボイス制度における適格請求書の記載要件を満たす形式で設計されています。適格請求書発行事業者の登録番号や税率ごとの消費税額等、必須の記載事項が規格上で定義されています。

事業者の導入方法

1. Peppol サービスプロバイダーを選ぶ

Peppol ネットワークを利用するには、デジタル庁が認定したPeppol サービスプロバイダーが提供するサービスを契約する必要があります。デジタル庁の公式サイトでは認定を受けたプロバイダーの一覧を公開しています。

多くの国内の請求書・会計ソフトベンダーが Peppol サービスプロバイダーとして認定されており、既存のサービスを継続しながら Peppol 対応を追加できるケースがあります。

2. Peppol ID を取得する

サービスプロバイダーへの申し込みを行うと、Peppol ID が発行されます。Peppol ID はネットワーク上の事業者識別子で、この ID を使って Peppol ネットワーク上の取引先とデータを送受信します。

3. 取引先に Peppol ID を通知する

自社の Peppol ID を取引先に伝えることで、Peppol ネットワーク経由での請求書の送受信が可能になります。取引先も Peppol ID を持っている(同ネットワークに参加している)必要があります。

対応サービスの確認

EIPA(デジタルインボイス推進協議会)の公式サイトでは、Peppol デジタルインボイスに対応した会計・請求書ソフト等のサービス一覧を公開しています。対応サービスは 30 社以上にのぼり(2026 年 5 月時点)、幅広い選択肢があります。

電子帳簿保存法との関係

2025 年に施行された電子帳簿保存法の改正では、デジタルインボイスを使った請求書データの会計帳簿への自動連携を支援する仕組みが整備されました。Peppol ネットワーク経由で受領した請求データを電子取引データとして適切に保存することで、電帳法の電子取引保存要件を満たす形での管理が可能です。

電子取引データの保存要件の詳細については、電子取引データの保存要件(個人事業主向け)をご参照ください。

PDF メール・紙インボイスとの違い

方式データ連携受領側の入力作業インボイス制度対応
紙の請求書手渡し・郵送手入力が必要記載事項を満たせば対応可
PDF メールメール送受信手入力が必要記載事項を満たせば対応可
デジタルインボイス(Peppol)システム間自動連携入力不要(自動取込)JP PINT 仕様で対応

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まとめ

電子インボイス(デジタルインボイス)は、Peppol という国際標準規格をもとに、デジタル庁が日本向け仕様(JP PINT)を管理しています。導入にはデジタル庁認定の Peppol サービスプロバイダーへの申し込みと Peppol ID の取得が必要です。

Peppol 対応の会計・請求書サービスは増加しており、既存のツールが対応しているかを EIPA の対応サービス一覧で確認することが導入検討の第一歩となります。

個別の会計処理や税務対応については、税理士等の有資格者にご相談ください。