電子帳簿保存法では、メールやクラウドサービスで受け取った請求書・領収書などの電子取引データを電子のまま保存することが義務付けられています(令和6年1月1日以降)。保存要件のうち「改ざん防止のための措置」として認められた方法の一つが、事務処理規程の整備です。
本記事では、事務処理規程の役割と国税庁が公開するサンプルの活用方法、個人事業主が規程を作成する際のポイントを整理します。
事務処理規程が必要な背景
電子帳簿保存法の電子取引データ保存では、保存したデータが後から改ざんされていないことを担保する措置が必要です。
この改ざん防止措置として、国税庁の一問一答(電子取引関係)では以下の4つの方法が示されています。
- タイムスタンプの付与
- 訂正・削除の記録が残るシステムの利用
- 訂正・削除ができないシステムの利用
- 訂正・削除の防止に関する事務処理規程の整備
事務処理規程は4つの方法のうち初期コストをかけずに対応できる手段です。専用のシステムや外部サービスを導入しなくても、規程を作成して業務上遵守することで改ざん防止要件を満たすことができます。
国税庁のサンプルを利用する
国税庁は、事務処理規程のWord形式サンプルを公式サイトで無償提供しています。
参照先: 国税庁 参考資料(各種規程等のサンプル)
公開されているサンプルの種類(抜粋)は以下のとおりです。
| サンプル名 | 対象 |
|---|---|
| 電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程(法人用) | 法人 |
| 電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程(個人事業主用) | 個人事業主 |
| スキャナによる電子化保存規程 | スキャナ保存を行う事業者 |
メールやクラウドサービスで受け取る請求書・領収書を電子保存する場合は、「個人事業主用」のサンプルを利用するのが基本です。
規程の主な内容
国税庁のサンプルをもとにした規程には、おおむね以下の内容が盛り込まれています。
目的・適用範囲
電子取引データの管理において訂正・削除を防止することを目的とし、対象とするデータの種類(請求書・領収書等)と適用する者を明示します。
訂正・削除の原則禁止
保存した電子取引データを正当な理由なく訂正・削除することを禁止します。
やむを得ない場合の手順
業務処理上やむを得ない理由により訂正・削除が必要な場合は、以下の内容を記録することを定めます。
- 訂正・削除の理由
- 作業を行った担当者
- 作業実施日
これらを記録として残すことで、後から経緯を確認できる状態を維持します。
定期的な点検
規程に従って運用が行われているかを定期的に確認する体制を設けます。個人事業主の場合、年1回程度の自己確認でも問題ありません。
個人事業主が規程を作成・備え付ける際のポイント
サンプルの事業者情報を書き換えるだけで基本的に完成
サンプルの「事業者名(屋号)」「代表者名」「作成日」等を自分の情報に書き換えることで、基本的な規程として使えます。大幅な改変は不要です。
「備え付け」の意味
規程は「備え付け」が必要ですが、これはいつでも閲覧できる状態で保存しておくことを指します。印刷して手元に置いておく、またはクラウドに保存してすぐ取り出せる状態にしておくことで要件を満たします。
規程と実際の業務運用を一致させる
規程があっても、実際の業務で規程外の方法で訂正・削除が行われていると、改ざん防止措置として認められない場合があります。規程に定めた手順を日常の業務フローに組み込むことが重要です。
検索要件は別途対応が必要
改ざん防止措置を事務処理規程で対応した場合でも、電子取引データに対する**「日付・金額・取引先」で検索できる要件(検索要件)**は別途満たす必要があります。ファイル命名規則や索引簿の整備と組み合わせて対応してください。
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まとめ
電子帳簿保存法の事務処理規程は、国税庁が公開するサンプルに事業者情報を記入するだけで作成でき、追加コストなしに改ざん防止要件を満たす手段として機能します。規程を作成した後は、日常の業務手順として実際に守ることが法令上の要件を満たすための鍵となります。
具体的な運用方法や個別のデータ管理体制については、税理士等の専門家にご相談ください。