インボイス制度(適格請求書等保存方式)では、適格請求書の記載事項に誤りがあった場合、売手・買手それぞれに定められた対応手順があります。記載ミスを放置すると受領者側の仕入税額控除に影響が生じるため、誤りを発見した時点での適切な対処が重要です。
本記事では、国税庁の公開Q&Aをもとに、売手(適格請求書発行事業者)と買手(課税事業者)それぞれの対応手順を整理します。
売手(適格請求書発行事業者)の対応
国税庁 Q&A 問32 によると、売手である適格請求書発行事業者は、交付した適格請求書等の記載事項に誤りがあった場合、買手に対して修正した適格請求書を交付しなければなりません。電磁的記録により提供した場合も同様です。
修正インボイスの交付方法(2 通り)
修正した適格請求書の交付方法(国税庁 Q&A 問33)として、以下の 2 つの方法が認められています。
方法①:全事項を記載したものを交付し直す
誤りがあった箇所を修正したうえで、記載事項のすべてを改めて記載した適格請求書を新たに交付する方法です。元の書類を無効とし、正しい内容の書類で置き換えるイメージです。
方法②:差分を明示したものを交付する
当初交付したものとの関連性を明らかにしつつ、修正した事項のみを明示したものを交付する方法です。元の書類の番号や日付を記載して紐づけを行い、誤りのあった項目と正しい値を示します。
記載ミスが起きやすい項目の例
- 登録番号(T + 13 桁)の誤記
- 税率区分の誤り(8% と 10% の混在)
- 税率ごとの消費税額の計算ミス
- 取引年月日の誤り
- 取引先の氏名・名称の誤記
買手(課税事業者)の対応
国税庁 Q&A 問92 によると、買手が受領した適格請求書の記載事項を自ら修正することは原則として認められません。
買手が取れる対応(2 通り)
対応①:売手から修正した適格請求書の交付を受ける
最もシンプルな対応です。誤りを発見したら速やかに売手に連絡し、上記の方法①または②で修正した適格請求書を交付してもらいます。
対応②:仕入明細書を作成し、売手の確認を受ける
買手が正しい内容を記載した仕入明細書等を自ら作成し、売手(適格請求書発行事業者)の確認を受ける方法です。
この場合、確認を受けた仕入明細書等は「請求書等」(仕入税額控除のために保存すべき書類)に該当します。売手から修正した適格請求書を受け取る形ではありませんが、仕入税額控除を受けるための書類として扱えます。
保存のポイント
修正後の書類(修正した適格請求書、または確認済み仕入明細書)は、仕入税額控除を受けるために適切に保存する必要があります。電子データで授受した場合は電子帳簿保存法に基づく保存要件が適用されます。
電磁的記録で提供・受領した場合
PDFメールやクラウドサービスによるデータ提供など、電磁的記録で適格請求書を交付した場合も、紙の場合と同様のルールが適用されます。修正した電磁的記録を提供し直す、または修正事項を明示した電磁的記録を追加提供する形での対応が考えられます。
修正前後の書類の管理
修正インボイスを発行する際は、元の請求書と修正版の対応関係が明確になるよう管理することが重要です。双方の書類を紐づけて保存しておくと、後から照合しやすくなります。
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まとめ
適格請求書の記載ミスが判明した場合の対応は、売手は修正した適格請求書を交付する義務を負い、買手は修正後の書類または確認を受けた仕入明細書を取得・保存するというのが基本的な流れです。
修正方法の詳細は国税庁の Q&A に具体例が示されています。個別の状況における対応については、税理士等の有資格者へのご相談を検討ください。