電子契約サービスを選ぶ場面で「立会人型」「当事者型」という区分が出てきます。本記事では、この2つの電子署名方式の仕組みの違いと、電子署名法第3条との関係を、法務省・デジタル庁・総務省の公開情報をもとに整理します。
電子署名方式の2区分
クラウド型の電子契約サービスで採用される電子署名方式は、署名鍵(秘密鍵)の保有主体によって大きく2種類に分かれます。
当事者型(当事者署名型)
契約当事者が自ら取得・管理する電子証明書と秘密鍵を使って、自分自身で電子署名を行う方式です。マイナンバーカードに搭載された電子証明書を利用した署名や、認定認証事業者が発行した電子証明書を使ったリモート署名などが該当します。
「本人だけが使える署名鍵」により署名が行われるため、電子署名法第3条の推定効(後述)が働きやすい方式とされています。
立会人型(事業者署名型)
契約当事者の指示に基づき、サービス提供事業者(電子契約サービス事業者)の署名鍵により暗号化等の処理を行う方式です。クラウド型電子契約サービスの多くがこの方式を採用しています。
利用者は電子証明書を別途取得する必要がなく、メールアドレスと2要素認証等で本人確認を行いつつ、サービス上で契約書への同意・署名操作を行います。
電子署名法第3条の推定効との関係
電子署名法第3条は、「本人による一定の電子署名が行われているときは、真正に成立したものと推定する」という効果(推定効)を規定しています。民事訴訟において文書の成立の真正を証明する際の根拠となる重要な規定です。
当事者型への適用
本人だけが保有・管理する秘密鍵により署名が行われる当事者型は、電子署名法第3条の要件(「本人だけが行うことができることとなるもの」)を満たしやすく、推定効が及ぶ方式とされています。
立会人型への適用(令和2年政府Q&A)
立会人型は署名鍵をサービス事業者が保有するため、当初は第3条の推定効との関係が不明確な部分がありました。
この点について、令和2年(2020年)7月および9月に総務省・法務省・経済産業省が連名でQ&Aを公表しました。
令和2年9月4日付Q&A(電子署名法第3条関係)の要旨
「利用者の指示のみに基づき」サービス事業者の署名鍵で暗号化等を行う立会人型電子契約サービスについて、以下の要件を満たす場合は電子署名法第2条第1項第1号の「電子署名」に該当し得るとし、第3条の推定効が及び得るという見解が示されています。
- サービス提供事業者の意思が介在する余地がなく、利用者の意思のみに基づいて機械的に暗号化等が行われる仕組みであること
- メール等による本人確認(2要素認証等)が行われていること
ただし、Q&Aはあくまで「及び得る」という見解であり、個々の事案での具体的な法的効力の判断は裁判所が証拠に基づいて行うものです。
2方式の比較
| 観点 | 当事者型 | 立会人型 |
|---|---|---|
| 署名鍵の保有者 | 契約当事者本人 | サービス提供事業者 |
| 電子証明書の取得 | 当事者が個別に取得が必要 | 不要(サービス側で管理) |
| 電子署名法第3条推定効 | 要件を満たせば及ぶ | 令和2年Q&Aの条件を満たす場合に及び得る |
| 相手方の環境 | 相手方も証明書等が必要な場合あり | メールアドレスがあれば対応可能 |
| 導入コスト | 電子証明書の取得・更新が必要 | 比較的導入しやすい |
実務上の選択の観点
どちらの方式が適切かは、取引の類型や相手方の状況によって異なります。
当事者型が向くケース
- 高額・重要度の高い契約(不動産売買、融資関連等)
- 相手方もクラウド型電子証明書等を保有している場合
立会人型が向くケース
- 取引件数が多く迅速な処理が求められる場合
- 相手方がITツールに不慣れで、電子証明書の取得が難しい場合
- 通常の業務委託契約、業務継続契約等
注意点
- 電子契約の有効性は、署名方式のみで一義的に決まるものではなく、個々の事案における証拠の評価も影響します。
- 金融商品取引法、宅地建物取引業法など、書面要件が定められた法令に基づく契約については、電子化の可否を個別に確認することが必要です。
- 相手方との間で使用する方式を事前に確認・合意しておくことが望ましい場合があります。
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まとめ
立会人型と当事者型の根本的な違いは「署名鍵を誰が保有するか」にあります。当事者型は契約当事者本人が鍵を管理し、立会人型はサービス事業者の署名鍵を使います。
電子署名法第3条の推定効については、令和2年の政府Q&Aにより、利用者の指示のみに基づき適切な本人確認が行われている立会人型サービスにも推定効が及び得るという見解が示されています。
取引の重要度、相手方の状況、導入コストなどを踏まえて、自社の業務に合う方式を選択することが出発点となります。
なお、本記事は法務省・デジタル庁・総務省等の公開情報をもとに整理したものですが、個別の契約の有効性や適切な署名方式の選択については、弁護士等の有資格者にご相談ください。