電子帳簿保存法では、電子データの「真実性の確保」の手段としてタイムスタンプが規定されています。本記事では、タイムスタンプの技術的な仕組みと、スキャナ保存・電子取引データ保存の2つの区分における電子帳簿保存法上の位置付けを、総務省・国税庁の公開情報に基づいて整理します。
タイムスタンプとは
総務省の説明によれば、タイムスタンプとは「ある時刻にその電子データが存在していたことと、それ以降改ざんされていないことを証明する技術」です。
技術的には、おおむね以下の流れで実現されます。
- 利用者が電子データのハッシュ値(データの要約値)をタイムスタンプ局(時刻認証局)に送信する
- タイムスタンプ局が、正確な時刻情報と受信したハッシュ値を組み合わせてデジタル署名を付与し、タイムスタンプトークンとして返送する
- 以後、このトークンにより「その時刻にそのデータが存在し、以降改ざんがない」ことを第三者が検証できる
ハッシュ値の送受信にとどまるため、データ本体がタイムスタンプ局に送られることはありません。
総務大臣による認定制度
タイムスタンプサービスの信頼性を担保するため、総務省は令和3年(2021年)4月に「時刻認証業務の認定に関する規程(令和3年総務省告示第146号)」を制定し、国による認定制度を整備しました。
電子帳簿保存法の要件を満たすタイムスタンプとしては、この総務大臣が認定した時刻認証業務に係るタイムスタンプを利用することが国税庁の解説資料に示されています。
電子帳簿保存法における位置付け
電子帳簿保存法では、「スキャナ保存」と「電子取引データ保存」の2区分において、真実性確保の手段としてタイムスタンプが規定されています。
スキャナ保存における扱い
紙の書類をスキャンして電子保存するスキャナ保存では、真実性確保のための措置として以下のいずれかを選択できます。
- タイムスタンプを付与する(入力期間内に付与)
- 訂正・削除の記録が残るシステム、または訂正・削除ができないシステムを利用する
タイムスタンプを選択する場合、入力(付与)期間は書類の受領等から次のいずれかに当てはまるまでの期間です。
- 書類の受領後 概ね7営業日以内(国税庁が「速やかに」と認める期間)
- 業務処理サイクルにより最長 約2か月と概ね7営業日以内(業務上通常の期間として認められる場合)
電子取引データ保存における扱い
メール添付のPDFや電子契約サービスで取り交わした契約書など、電子的に授受した取引情報の保存でもタイムスタンプは真実性確保の手段の一つとされています。
国税庁の適用要件によれば、電子取引データ保存での真実性確保は以下の4つの選択肢から1つ以上を満たせば構いません。
- タイムスタンプが付与された後に取引情報を授受する
- 授受後速やかにタイムスタンプを付与する(最長約2か月と概ね7営業日以内)
- 電子取引データの訂正・削除を行った場合にその記録が残るシステム、または訂正・削除ができないシステムを利用する
- 正当な理由のない訂正・削除の防止に関する事務処理規程を定めて運用する
令和3年度改正での主な変更点
令和3年度(2021年)の税制改正により、タイムスタンプに関するルールが以下のとおり緩和されました。
| 変更項目 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| タイムスタンプ付与期間 | 受領後3営業日以内 | 最長約2か月と概ね7営業日以内 |
| 代替手段 | 限定的 | クラウドサービス等で訂正削除履歴が保存されるシステムの利用が可能に |
代替手段として認められるシステムとは、他者が運営するクラウドサービスなどで、電磁的記録の訂正・削除の記録が残る、または訂正・削除ができない仕組みを指します。
個人事業主にとっての実務的な選択肢
専用のタイムスタンプサービスの導入は月額費用が発生する場合があります。個人事業主の方がコスト面を重視する場合、国税庁の公開情報では以下の方法も認められています。
- 事務処理規程の整備(前述の4番の手段): 国税庁の電子帳簿等保存制度特設サイトでサンプル様式が公開されており、無償で入手・活用できます
- 訂正削除履歴が残るクラウドサービスの利用: 多くのクラウド会計ソフトや電子契約サービスがこの要件に対応していると説明しています
いずれの手段を選択するかは、取引量・システム環境・コストを総合的に判断することが重要です。
注意点
- タイムスタンプを使用する場合、「総務大臣が認定する時刻認証業務に係るタイムスタンプ」であることが要件として示されています
- スキャナ保存でタイムスタンプを選択しない場合は、訂正・削除の記録が残るシステムの利用が必要です
- 個別のシステムが電子帳簿保存法の要件に適合しているかは、システム提供事業者または税理士等にご確認ください
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まとめ
タイムスタンプは、電子データが特定の時刻に存在し、以降改ざんされていないことを第三者が検証可能なかたちで証明する技術です。電子帳簿保存法では、スキャナ保存・電子取引データ保存の双方において真実性確保の手段のひとつとして規定されています。
令和3年度改正によりタイムスタンプの付与期間が延長され、訂正・削除履歴が残るシステムの利用や事務処理規程の整備といった代替手段も整備されています。個人事業主の方は、運用コストと実務負担を踏まえて適切な手段を選択することが出発点となります。
なお、本記事は国税庁・総務省等の公開情報をもとに整理したものであり、個別の保存方法や税務上の取扱いについては、税理士等の有資格者にご相談ください。